【書評・感想・要約】お経で読む仏教 NHK出版 学びのきほん | 釈 徹宗

人文・思想
著書お経で読む仏教 NHK出版 学びのきほん
著者釈 徹宗
カテゴリー人文・思想 > 宗教
出版社NHK出版
発売日2020/12/25   
Amazonカスタマーレビュー4.2 (287)
こんな人にオススメ!
  • 仏教の歴史や発展に興味がある人におすすめです。理由は、仏教の起源から教えがどのように広まったかを深く理解できるからです。
  • 仏教の教えや悟りの道に関心がある人におすすめです。理由は、仏教の基本的な教えや悟りのプロセスが物語を通じて学べるからです。
  • 深い哲学や宗教の教えを学びたい人におすすめです。理由は、仏教の無我の教えや慈悲の精神について、現代にも通じる深い洞察が得られるからです。

仏教の旅:悟りから世界への広がり

感想の要約
  • 仏教の起源として,ゴータマ・シッダルタの「生老病死」の苦悩を乗り越える決意と悟りの過程が感動的です。
  • 仏教の教えがサンガの分裂や大乗仏教の興隆を経て,社会に広く受け入れられた過程が興味深いです。
  • お経の口伝から文字化への移行と弟子たちの努力が,仏教経典の奥深さと価値を強調しています。

仏教の起源と発展についての解説は、まるで時を超えた壮大な旅を思わせます。まず、仏教の創始者であるゴータマ・シッダルタ(釈迦)の生涯は、その教えの根底にある深い苦悩と真理の追求が描かれており、読者に強い印象を与えます。「生老病死」の苦悩を乗り越えるために、王子としての贅沢な生活を捨て、悟りを開いたその決意は非常に感動的です。このようなストーリーは、現代の私たちにも大きなインスピレーションを与えます。

次に、仏教の教えがどのように広まったかという部分も非常に興味深いです。ブッダの入滅後、サンガが分裂し、様々な部派が生まれる過程は、宗教が一枚岩ではないことを示しています。特に、大乗仏教の興隆や、その後の密教の発展は、仏教が時代や地域によってどのように適応していったのかを理解する鍵となります。大乗仏教が他者との関わりを重視し、広く社会に受け入れられた点は、現代社会における仏教の普遍性を感じさせます

最後に、お経がどのように伝承され、記録されてきたかという点も驚きに満ちています。口伝から文字化へと移行する過程で、弟子たちの努力と工夫が感じられます。初期仏教の出家者たちが「合誦」という方法で正確に教えを伝えていたことや、後に「結集」によって編集されていった過程は、知識の継承の重要性を強調しています。このような詳細な歴史を知ることで、仏教経典の奥深さとその価値を改めて実感しました。

本好きな女の子
本好きな女の子

王子は苦悩に気づきて、贅沢捨てて歩み出す。生老病死の四苦を越え、菩提樹の下で悟り得る。目覚めし人、ブッダとなりて、真理を説き続ける道。弟子たちに伝う言葉、時を超えし光の如く。

ブッダの最期を描く『涅槃経』の魅力

感想の要約
  • 『涅槃経』は,ブッダの最期を物語形式で描き,仏教の基本的な教えを学ぶことができます。
  • ブッダが「自らを拠りどころとせよ」と説く場面は,自己信頼と法の尊重を強調しています。
  • ブッダが老病死の苦しみを引き受け,最期まで弟子たちを導く姿は,現代にも深い感動と教訓を与えます。

『涅槃経』は、ブッダの最期の様子が物語形式で描かれた大変意義深い経典です。このお経は、ブッダがどのように死と向き合い、最期まで弟子たちに教えを説く姿を通して、仏教の基本的な教えを学ぶことができます。特に、ブッダが「自らを拠りどころとせよ」と語る場面は、自己に対する信頼と法の尊重を説く重要なメッセージです。

この経典の魅力は、物語としての読みやすさと仏教の教えの体系的な紹介が両立している点にあります。「国の七不衰法」や「八正道」「七覚支」など、仏教の基本的な教えが、ブッダの最期の旅の中で具体的に語られています。これにより、仏教の修行方法や生活指針が、具体的なエピソードを通して理解しやすくなっています。

『涅槃経』は、ブッダの死を通して生命の真実と向き合う姿を描いています。ブッダが老病死の苦しみを引き受け、最期まで弟子たちを導こうとする姿は、現代の私たちにも深い感動と教訓を与えてくれます。この経典を読むことで、ブッダの教えの本質とその偉大さを改めて感じることができるでしょう。

本好きな女の子
本好きな女の子

自らを拠りどころとし、法を頼りに進む道。ブッダの言葉は時を超え、老病死の苦しみを引き受け、最期まで導く光。生命の真実と向き合い、静かに流れる涅槃の川。

ミリンダ王の問い:仏教の真髄に迫る対話

感想の要約
  • 『ミリンダ王の問い』では,ギリシャの王ミリンダと仏教僧ナーガセーナの対話を通じて仏教の無我の教えが鮮やかに示されています。
  • 仏教の時間観についての議論は,縁起の法則を理解するための重要な手がかりを提供します。
  • 最後に,悪を行っても臨終に仏を念じれば救われるという考え方は,仏教の慈悲深い教えを象徴しています。

『ミリンダ王の問い』は、ギリシャの王ミリンダと仏教僧ナーガセーナの対話を通じて仏教の深奥を探る面白い経典です。特に、ナーガセーナが「我々は実体ではなく、集合体である」と説く場面は、仏教の無我の教えを鮮やかに示しています。ミリンダ王がこれに反論するやり取りは、読者に仏教の核心を考えさせる絶好の機会です。

また、仏教の時間観についての議論も非常に興味深いです。ナーガセーナが「過去・未来・現在の根本は無明」と述べる場面は、仏教の縁起の法則を理解するための重要な手がかりです。この対話を通じて、私たちは自分自身の無明を意識し、智慧の光を求めることの大切さを学ぶことができます。仏教の時間論や因果関係についての説明も、現代の哲学や科学と比較して興味深い視点を提供します。

最後に、ミリンダ王が「臨終に仏を念じれば天に生まれる」という教えを批判し、それに対するナーガセーナの「石と船のたとえ」の答えは感動的です。悪を行っても最後に仏を念じることで救われるという考え方は、仏教の慈悲深い教えを象徴しています。この経典を通じて、仏教の教えが持つ多様性と深さ、そしてそれが現代にも通じる普遍的な価値を感じ取ることができます。

本好きな女の子
本好きな女の子

無明の闇に光を灯し、縁起の法則に心を澄ます。実体なき我らが集い、時を越えて真理を問う。仏を念じ、悪も救われる慈悲の船、揺るぎなき智慧が示す道。

維摩の智恵と挑戦

感想の要約
  • 維摩は「無生法忍」を得ており,人々の苦しみが続く限り自身の病も治らないと説くことで,慈悲の精神を強調している。
  • 維摩と文殊菩薩の対話は,仏教の教えを深く理解するためのものであり,言語を超えた真理の体得が重要であることを示している。
  • 維摩の沈黙は,「不二の法門」に入るための最高の答えとして描かれ,言葉に頼らず真実を体得することの重要性を強調している。

『維摩経』は、大乗仏教の教えを通じて、人々に深い洞察と挑戦を与える物語です。維摩という資産家の病気を通じて、仏道の真髄を説く場面が描かれています。彼は「無生法忍」を得ており、在家者としての立場で仏道を極めています。この物語の核心は、人々の苦しみが続く限り、維摩の病も治らないという慈悲の表現です。

維摩が病気になった理由として「人々の苦しみ」を挙げる場面は印象的です。彼は、仏弟子や菩薩たちがその理由を問う中で、人々の幸福がない限り自分の幸福はないと説きます。これは、大乗仏教の精神であり、他者の苦しみを自身の苦しみと捉える姿勢が強調されています。

また、維摩と文殊菩薩の対話を通じて、仏教の深遠な教えが明らかにされます。維摩の沈黙は「不二の法門」に入るための最高の答えとして描かれ、言語や概念を超えた悟りの境地が示されます。この沈黙は、言葉に頼らず、真実を体得することの重要性を強調しています。

本好きな女の子
本好きな女の子

人々の苦しみが私の病を深める無生法忍の智慧を胸に心は空っぽの部屋に座し慈悲の光で包まれ静かに流れる時の中で言葉なき真理を抱きしめる

阿弥陀仏の浄土:心の故郷

感想の要約
  • 極楽浄土は西方にあり,阿弥陀仏が教えを説いている場所として描かれています。
  • 青い花が青い光を放つように,各自が自分本来の色で輝くことの重要性が強調されています。
  • 「俱会一処」の概念により,同じ世界で再び会えるという希望が人々にとって大きな慰めとなっています。

『阿弥陀経』は、阿弥陀仏の浄土を描写し、浄土がどれほど美しい場所かを語ります。お釈迦様が、浄土は西方にあり、極楽の世界で阿弥陀仏が教えを説いていると述べる部分は、特に心に響きます。極楽浄土という概念が、人々の心の安らぎと希望を象徴しているのです。

また、浄土の鳥たちが仏教の教えを説く場面や、風の音すら仏法を伝えるという描写は、非常に詩的でありながら深い教えを含んでいます。私たちが本来の自分の光で輝けば良いというメッセージが強調されています。青い花は青い光を、赤い花は赤い光を放つように、各自が自分の本来の色で光ることの重要性を教えてくれます。

『阿弥陀経』の最も感動的な部分は、「俱会一処」という概念です。同じ世界で再び会えるという信仰が、人々にとって大きな慰めとなります。阿弥陀仏がお迎えに来てくれるという信仰は、死に対する恐れを和らげ、希望を持たせてくれます。この経典を読むことで、仏の慈悲に包まれた安心感を得ることができるのです。

本好きな女の子
本好きな女の子

青い花は青い光、赤い花は赤い光、自らの色で輝く極楽の蓮。それぞれの光が響き合い、阿弥陀仏の浄土に導かれ、共に再び会う希望の地。

コメント

タイトルとURLをコピーしました