著書 | すべての仕事はクリエイティブディレクションである。 |
著者 | 古川 裕也(著) |
カテゴリー | 社会・政治 > 社会学 アート・建築・デザイン > デザイン |
出版社 | 宣伝会議 |
発売日 | 2016/5/8 |
Amazonカスタマーレビュー | (108) |
- 広告業界の歴史と進化に興味がある人におすすめです。 理由は、クリエイティブ・ディレクションの歴史的背景や進化の過程が詳細に解説されており、広告業界のダイナミックな変化を理解できるからです。
- クリエイティブ・ディレクターを目指す人におすすめです。 理由は、クリエイティブ・ディレクターが持つべき能力や行動が具体的に示されており、実践的な方法論を学ぶことができるからです。
- 新しいアイデアを生み出す方法を学びたい人におすすめです。 理由は、アイデアの定義や生成プロセスについて深く掘り下げられており、ひらめきや直感の重要性が強調されているからです。
クリエイティブ・ディレクションの歴史と進化
- クリエイティブ・ディレクションは195年代にニューヨークの広告代理店から始まり、テレビCMの制作を中心に役割が確立された。
- クリエイティブ・ディレクターが持つべき能力には、「定義する」「仮説をたてる」「プリンシプルをつくる」「全体性を把握する」などが含まれ、これらが広告キャンペーンの成功に不可欠である。
- 具体的な事例として、ボルボの「地球から交通事故を完全に失くす」ミッションやDoveの「すべての女性は生まれつき美しい」ブランドフィロソフィーが、クリエイティブ・ディレクションの成功を示している。
クリエイティブ・ディレクションの歴史とその進化についての解説は、広告業界のダイナミックな変化を背景に、非常に興味深い内容です。195年代、ニューヨークのマディソン・アヴェニューで広告代理店が台頭し、テレビが広告の主要メディアとなる中で、クリエイティブ・ディレクターの役割が確立されました。当時のクリエイティブ・ディレクションは、テレビCMと連動したグラフィック広告の制作を中心としたものであり、広告表現全体の責任者としての位置づけでした。こうした背景から、クリエイティブ・ディレクションが広告表現の統括技術としての定義が成り立ってきたのです。
次に、クリエイティブ・ディレクターが持つべき能力や行動についての具体的な説明が続きます。「定義する」「仮説をたてる」「プリンシプルをつくる」「全体性を把握する」などの行為は、クリエイティブ・ディレクターが日常的に行うべき重要な要素です。これらの行動が、クリエイティブ・ディレクションの方法論の基盤となり、広告キャンペーンの成功に直結するものです。特に「仮説をたてる」行為は、課題に対する最初の仮説を提示することから始まり、その後のディレクションプロセスで修正を加えながら進行する点が強調されています。
最後に、クリエイティブ・ディレクションの実践的な方法論についての説明が展開されます。ミッションの発見からコア・アイデアの確定、そしてアウトプットのクオリティ管理までのプロセスが、論理的かつ構造化された方法で示されています。例えば、ボルボの「地球から交通事故を完全に失くす」というミッションや、Doveの「すべての女性は生まれつき美しい」というブランドフィロソフィーは、クリエイティブ・ディレクションの成功事例として紹介されています。これらの事例から、クリエイティブ・ディレクターが持つべき視点と行動が具体的に描かれており、広告表現におけるクリエイティブ・ディレクションの重要性が改めて認識されます。
クリエイティブの光輝く、ニューヨークの街で生まれた使命。広告の波に乗り、心を揺さぶる言葉と絵。すべての女性は美しく、光を放つその瞬間。ボルボの夢、交通事故ゼロの未来へ。
新しいアイデアの力学:創造の本質を探る
- アイデアは「対象物をより良い状態に変化させる考え」であり、その変化させる力が重要です。
- 新しさは歴史的コンテキストを把握し、過去の優れたアウトプットに基づいて裏切ることで生まれます。
- アイデアの生成には「ひらめき」と「直感」があり、特に直感は繰り返しの訓練で強化されます。
アイデアとは「対象物をより良い状態に変化させる考え」であると定義されるべきです。この定義によれば、真に価値のあるアイデアは、出現する前より後の方が対象物の状態を改善する力を持っています。この力があるかどうかが、アイデアの真価を測る基準となります。
歴史的コンテキストを把握することは、新しさを生み出す上で不可欠です。過去の優れたアウトプットを認識し、その流れをどう変え、何を加え、裏切るかを考えることで、確実に新しいものを生み出すことができます。この過程が、新しいアイデアを評価し、その高さを測る基準を提供します。
アイデアの生成には「ひらめき」と「直感」という二つのルートがあります。ひらめきは言語的・論理的な思考に基づき、直感は過去の経験から自然と生まれるものです。直感は繰り返しの訓練によって強化され、無意識かつ正確に機能するようになります。この直感の機能が、クリエイティブな仕事における勝利の鍵となるのです。
アイデアの力、それは変化の種、歴史を裏切り新たな光を生む。訓練と直感が織り成す魔法、創造の翼が広がる瞬間。
JR九州新幹線「祝!九州」キャンペーンの舞台裏
- 「祝!九州」キャンペーンは、九州全体の経済を活性化し、地域住民の一体感を生むことを目指した大規模プロジェクトです。
- キャンペーンは「I ♥ NY」を参考にし、九州独自の祝祭性と参加性を強調することで地域全体を巻き込みました。
- このプロジェクトは、九州の住民の協力と創造力に支えられ、本物の祝祭性と参加性を具現化し、地域活性化の成功例となりました。
JR九州新幹線の全線開業を祝う「祝!九州」キャンペーンは、地域の盛り上がりと参加性を重視した大規模なプロジェクトです。九州全体の経済を活性化するという重要なミッションを背景に、九州の住民全員を巻き込む「祭り」を創り出すという大胆なアイデアが採用されました。このキャンペーンの成功は、地域の人々が一体となって盛り上がりを共有できる仕組みがしっかりと作られたことにあります。
キャンペーンの中核となるアイデアは、ニューヨークの「I ♥ NY」キャンペーンを参考にしつつ、九州独自の「祝祭性」と「参加性」を強調しました。九州の人々が新幹線に向かって手を振る姿を映像化することで、地域全体が一つになって喜びを分かち合う様子を表現することができました。特に、参加者全員の陶酔感・一体感を生むことを目標としたこのプロジェクトは、単なる広告を超えた「祭り」としての成功を収めました。
このプロジェクトの実現には、多くの困難を乗り越える必要がありましたが、特に重要だったのは、九州の人々の協力とラテン的な陽気さに支えられた点です。集まった人々の笑顔や創造力が、キャンペーンの魅力を最大限に引き出しました。本物の祝祭性と参加性を具現化したこのキャンペーンは、地域全体を活性化する力を持ち、広告の新しい可能性を示す事例として評価されました。
九州の風が歌う、新幹線の夢、祝祭の光が心に灯る。共に手を振り、笑顔が波となり、未来への道を照らす。全ての魂が一つに溶ける瞬間を。
カンヌライオンズの進化と広がり
- カンヌライオンズは211年に「広告」を外し、クリエイティビティ全般を対象とする「国際クリエイティビティ・フェスティバル」に進化した。
- 新しいカテゴリーの導入は業界の現状とトレンドを反映しており、特に「スポーツ」「ビジネス・デザイン」「クリエイティブ・データ」の可能性が注目されている。
- これからのクリエイティブ・ディレクションにはデジタルネイティブであることが求められ、次世代のリーダー育成が重要である。
カンヌライオンズは、1954年にフィルム広告を中心としたフェスティバルとして始まりましたが、211年に「広告」を外し、「国際クリエイティビティ・フェスティバル」として再出発しました。この変化は、クリエイティブ・ディレクションが広告だけでなく、幅広い領域で重要視されるようになったことを示しています。クリエイティビティによって生み出されるすべての仕事が対象となり、広告だけに留まらない新たな価値が生まれています。
対談の中で、テリー・サベージはカンヌライオンズがビジネスの現状を反映し続ける必要があると強調しました。例えば、ダイレクト部門やプロモ&アクティベーション部門は、時代と共に進化しています。「スポーツ」「ビジネス・デザイン」「クリエイティブ・データ」といった新しいカテゴリーが提案される中で、カンヌライオンズは常に業界のトレンドをリードし、反映していることがわかります。
これからのクリエイティブ・ディレクションには、デジタルネイティブであることが求められます。世代間のインターフェースを保ちつつ、次世代を育てることが重要です。クリエイティブ・ディレクターには、リーダーシップとアイデアの力を信じることが不可欠であり、これらの資質を持つ人材を育成することが業界全体の課題とされています。
カンヌの海辺に広がる夢、広告が消えクリエイティビティが花開く。新しいカテゴリーが世界を映し、未来を創る力になる。アイデアの力が織り成す美しさ、デジタルの波に乗る世代が紡ぐ明日。
これからのクリエイティブ・ディレクションの未来
- アル・ゴアやビル・クリントンのメッセージは、広告業界がその力を世界のために活用することを促し、広告が社会的意義を持つ活動へと進化していることを強調しています。
- インターネットとデジタルメディアの多様化により、クリエイティブ・ディレクターはより豊富な手段でクライアントの課題に答えることができるようになり、最適なアイデアと手段を選び出す重要性が増しています。
- 現代のマーケティングにおいて、企業が社会的価値を提供することが不可欠であり、持続可能な未来を目指すためにクリエイティブ・ディレクションの役割がますます大きくなっています。
第4章は、クリエイティブ・ディレクションの進化について語るとても興味深い内容でした。まず、広告業界の変化を背景に、クリエイティブ・ディレクションがどのように適応し、新しい方法を取り入れているかが紹介されています。アル・ゴアやビル・クリントンのメッセージは、広告業界がその力を世界のために活用することを促すものであり、広告が単なる販売促進から社会的意義を持つ活動へと進化していることを強調しています。
次に、インターネットとデジタルメディアの登場による変革がクリエイティブ・ディレクションに与えた影響について深く掘り下げられています。特に1995年以降のメディアの多様化は、クリエイティブ・ディレクターにとっての手段を豊富にし、より多様な方法でクライアントの課題に答えることができるようになった点が強調されています。また、”統合”という考え方が誤解されがちな点についても触れられ、最適なアイデアと手段を選び出すことの重要性が説かれています。
最後に、クリエイティブ・ディレクションの未来についての展望が語られています。特に、社会的な問題解決や企業のブランディングにおいて”for Good”の要素が重視されるようになったこと、そして映像コンテンツの重要性が再び高まっていることが示されています。ブランドが社会的価値を提供することが、現代のマーケティングにおいて不可欠であることが強調され、企業が持続可能な未来を目指すためにクリエイティブ・ディレクションが果たす役割の大きさが描かれています。全体として、第4章は広告業界の変化とその中でのクリエイティブ・ディレクションの進化について、非常に興味深く示唆に富んだ内容でした。
広告の力よ、世界を救うために。アル・ゴアの声が響き、ビル・クリントンの願いが舞う。クリエイティブの灯、地球を照らし、人々の心を繋ぐ。広がる手段の中、最適なアイデアが咲き誇る。未来へ続く道、我らの使命を胸に刻む。
広がるクリエイティブ・ディレクションの役割
- トム・フォードはグッチでのクリエイティブ・ディレクションにより、ブランドの方向性を明確にし、強いブランドイメージを確立しました。
- 村上太一のリブセンスは、課題 → アイデア → エクゼキューションというプロセスを通じてビジネスを成功させ、クリエイティブな視点がビジネスで重要であることを証明しました。
- バラク・オバマの大統領選挙キャンペーンは、クリエイティブ・ディレクションの力で弱みを強みに変え、成功に導いた例です。
第5章では、クリエイティブ・ディレクターの役割が広告業界だけでなく、多岐にわたる分野で重要な役割を果たしていることが強調されています。例えば、トム・フォードのグッチでの成功は、ファッション業界におけるクリエイティブ・ディレクションの典型的な例です。彼のリーダーシップは、ブランドの方向性を明確にし、カルチャーとしての強いブランドイメージを確立することに成功しました。これは、広告と同じように、課題に対する明確なミッションとアイデアが必要であることを示しています。
また、ビジネス・デザインにおいてもクリエイティブ・ディレクションの手法が有効であることが示されています。村上太一のリブセンスは、自身の体験から課題を見つけ、それを解決するためのビジネスモデルを構築しました。このアプローチは、課題 → アイデア → エクゼキューションというクリエイティブ・ディレクションの基本プロセスに沿っています。村上の成功は、クリエイティブな視点がビジネスの世界でも重要であることを証明しています。
最後に、バラク・オバマの大統領選挙キャンペーンは、クリエイティブ・ディレクションが政治の世界でも大きな影響を与えることを示しています。オバマ陣営は、「Change」というシンプルかつ強力なスローガンを掲げ、アジェンダ・セッティングによって対立候補の強みを逆転させました。この戦略は、従来の選挙戦術を刷新し、新しい方法で有権者の心を掴むことに成功しました。クリエイティブ・ディレクションの重要性とその応用範囲の広さが、ここでも明確に示されています。
ブランドの華、時代を越えて輝く。トム・フォードが描く夢、グッチの未来を纏う。課題を越え、新たな道を創る手。歴史の織り成す布、クリエイティブ・ディレクションの力。
アイデアの力で未来を拓く
- 広告業界のクリエイティブ・ディレクションは、課題を解決する力を持ち、様々な分野で応用可能である。
- 企業の経営戦略や都市開発など、多様な分野でクリエイティブ・ディレクターのスキルが求められている。
- 広告代理店は、広告業務にとどまらず、クライアントの課題を解決するための総合的なサービスを提供するべきである。
広告の仕事は、ただの宣伝に留まらない。その本質は、課題を見つけ、解決する力だ。クリエイティブ・ディレクションの技術は広告業界を超えて応用可能であり、その力を発揮する場は無限に広がっている。
広告以外の分野でも、クリエイティブ・ディレクターが果たす役割は大きい。企業の経営戦略から都市開発、商品開発に至るまで、そのスキルが求められている。クリエイティブ・ディレクションの力は、あらゆる課題を解決する手段となる。
広告代理店の役割も変わりつつある。従来の広告業務にとどまらず、あらゆる手段を駆使してクライアントの課題を解決する。クリエイティブ・ディレクションの技術を持つ人材が、その未来を切り拓く鍵となるだろう。
世界の課題を解くために、クリエイティブな力が必要だ。新たなアイデアが、未来を照らす光となる。広告を越えたその技術、すべての領域で輝きを放つ。
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